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皆既月食





夕飯の食卓から 窓を開けると
テレビでやってたように 満月が欠け始めてた

何百年に一回とか 言われりゃ子供等は
キラキラ輝く瞳で その時を待ってる

昨日は叱られて 泥だらけの靴を黙って洗った
満月は更に小さくなって 目が離せない

悔しいことも明日になって 忘れてしまえたら楽なのにね
たまには地球の影に隠れて 泣いちゃってもいいんだよ


いそいそと支度をして 通りへくり出すと
街中のあちこちで みんなが空を見てる

うつむいて歩くよりも ずっといいよ
スマートフォンで写真を撮ろう しっかり立ち止まって

昨日はツイてなくて 裏目裏目で口を閉ざした
満月はついに見えなくなって 息をひそめてる

ままならぬ事も初めてじゃないし 解りあえる事も解ってる
たまには地球の影に隠れて その時を待つんだ



 
子供等が寝息立てて 明日の夢に埋もれた頃に
満月は何にもなかったような 顔でまた出て来た

何でもありな訳じゃないけど 大抵の事は大丈夫
たまには地球の影に隠れて 出直したっていいんだよ

悔しいことも明日になって 忘れてしまえたら楽なのにね
たまには地球の影に隠れて 泣いちゃってもいいんだよ





(2022.12.5)